2007年11月19日

将棋

 昨日は、消防の訓練でした。
朝の7時に集合ということでしたから、そんなに早起きをして訓練中にお腹が下らないかしら、
と、そればかりが心配でした。
まじめな話、前例は、いくらでもあるのです。
ですから私、ゴクリと2粒、強力な整腸剤を飲んで、出動いたしました。

 この薬が効いたのか、それとも前の晩、用心して9時に寝たのがよかったのか、とにかく訓練は無事に終了いたしました。
それから皆で朝飯を食べて、お疲れ様です、と解散したのが、まだ9時半でありました。

 朝の6時に起きると、1日ってとても長いものです。
いつもなら漸く動き始める時間に、すでにひと仕事、それも前々から気を重たくしていた大仕事が
終わっています。
この調子なら、始まったばかりの今日1日を、なんだか有効に使えるのではないか、
そんな気がしてまいります。

 ところが、そう考えるのは素人の浅知恵というものでして、やはり人間には、それぞれの容量という
ものがあるのです。
いくら時間が有り余っていたって、どんなにやる気に満ちていたって、そんなことは、電池が切れて
しまえば関係ないのです。
 ですから私、昨日は、訓練に燃え尽きて、不本意ながらも終日まるまる、阿呆のようにぐったりとして過ごしました。

 で、ぐったりと何をしていたかと言いますと、テレビで将棋を見ておりました。

 私、将棋は子供の頃にやったくらいで、今では駒の動かし方もはっきりといたしませんが、
それでも、割りと好きなのです。棋士に関する本を読んだり、テレビで対局を眺めたり、
分からないなりにも、何故だか興味を覚えるのです。

 いつでしたか、コンピューターと竜王の対戦、というのがありました。
これは大変面白かったです。勝負自体も勿論面白かったのですが、一番興味を引いたのは、
このコンピューターをプログラムした人が、まるで将棋を知らないということでした。
 要するに、膨大なデータを如何に処理して計算するか、この方法を考え、プログラムする人ですから、別に将棋のことなんて知らなくてもいいんですね。
 ところがこのコンピューターが、滅法強いんです。
また、滅法強いから、いよいよ竜王の登場となった次第なのです。
 ちなみにチェスの世界では、すでにコンピューターが世界チャンピオンを打ち負かしているんですよ。

 この対局、プログラマーの隣には、ちゃんと将棋の分かる棋士が座って、盤を挟んだ竜王と、
コンピューターの指示で実際に駒を動かし合う、というものでした。
 結果は、竜王の勝利でしたが、しかしこれ、決して楽な勝利ではありませんでした。

 で、投了の時、普通将棋って、何手も何十手も先を読んで差していますから、詰めが見えればもう、そこまでですよね。子供の将棋のようにしつこく最後まで打ったりせずに、参りました、と頭を下げて
終わりです。
 ところがこのプログラマー、なにせ将棋を知りませんから、自分が詰まれていることが分からない。
隣の棋士が、参りました、と投了したのに驚いて、えっ、なんて声を上げました。
 本当ですか? なんて小声で訊いて、棋士の説明にもなかなか納得がいかない様子でありました。

 この気持ち、やはり将棋のよく分からない私には、非常によく分かるんです。
 実は昨日テレビで見ていた対局も、後手が次から次へと王手で攻めていて、いきなりぷつっと投了、突然勝敗が決したんです。
どちらが投了したのかよく分からずに、てっきり攻め続けていた後手が勝ったものと思っていたら、
百何十手で、先手何々八段の勝ち、
なんてナレーションが流れました。
ええっ?どういうこと?と、私、本当にずっこけるような思いでした。

 つまりは、繰り返すようですが、子供の将棋じゃあないんです。
先を読み、また、潮時も知る、大人の世界なのです。

 しかし、ずっこけさせられた腹いせに、こんなことも考えます。
確かに、あと十数手も差せば、詰まれることは間違いないのかも知れない。
しかし、その十数手の間に、例えば相手が早起きによる腹痛を起こして、畳の上をもんどり打つ可能性だってあるではないか。
地震が起きて、駒が踊って、上手い具合にガチャガチャになることだってあり得るではないか。
どうしてそう、先を急ぐのだ。
何故君は、そんなに早く、投了してしまうのだ。

 すると彼は、きっとこう答えるでしょうね。
そんなことで、仮に対局が流れても、もうすでに、負けは負けなのです。
つまり、負けというものは、状況が決するものではなく、自分の中で決するものなのです。

 成程。






 
 

 


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