2008年02月15日

 先日、近所のおばちゃんが、転んで腕を怪我してしまいました。
関節かスジを痛めたそうで、左腕が、肘より上に上がりません。
きちんと治療をするには、手術が必要で、勿論、入院・リハビリもしなくてはいけません。
ところがこのおばちゃんは、やはり体の悪いおじさんの介護をしておりますから、
そういう時間が取れないのだと言います。
 もう、どうせ年寄りだから、ちょっとくらい不便でもいいの。痛くなければいいの。
そんなことを言います。

 私も、それでいいと思います。
治せるものを治さないのは、勿体ないような気もいたしますが、反面、それが自然というものだろう、
なんて思います。
 どうしてそんな風に思うのかと申しますと、私自身、医者が極端に苦手であるからです。

 内科に外科、歯医者に目医者、とにかく私、医者というものにはなるべく掛かりたくありません。
ですから、1週間位熱が下がらなくたって、まず、医者に行こうとは考えません。
 何故と言うに、病院という場所に近寄りたくないのです。

 井上陽水の昔の歌に、

 悲しい人とは会いたくもない
 笑える場所なら何処へでも行く

なんてフレーズがありましたが、本当に、その通りだと思います。
どうして具合が悪いのに、病んだ人々が集まる場所に行かねばならぬのか。そう思います。

 しかし、そんな理屈をこねていて、なかなか医者に行かずにいたら、私、奥歯が一本なくなってしまいました。
 だいぶ前から、舌で触るだけでもキィーンと痛かった虫歯を、それでも放っておきまして、
ある日飲み屋で、そんなことはすっかり忘れて、うははと笑いながら、その歯でスティック人参を
齧ってしまいました。
ギュイーンとまさに、稲妻が走りました。
体がびくりと突っ張って、頭がビリビリ痺れました。
本当に、気を失うくらい、痛かったです。
 それからしばらくしましたら、ポロリと抜けてしまいました。
せいせいしました。

 ところが、抜けるまでの数日は、さすがに私も医者に行くべきかな、と考えまして、
話のついでに、いくらかの人々に相談したりもいたしました。
 ほとんどの人が、何をしているんだ、早く医者に行け、と言った反応で、
殊、歯医者が嫌いな私は、大変憂鬱になりました。
 私の友人に、三重の山奥で原始人のような暮らしをする強烈な人がおりますが、この人までもが、
それは歯医者に行ったほうがいい、なんて言って、私、信じていたものに裏切られたような寂しさを味わいました。
 ただひとり、
いいんだよ。それが自然なんだから。歯なんて抜けるためにあるんだよ。
そう言った人物がおりまして、それは、私の4つ違いの姉でした。
 この姉、ネパールの山奥に住んでおりまして、修行と称して洞窟にこもったり、冷たい川で泳いだり、各地の寺をまわったり、と、ひと言で申しますと、変人です。
 私も変人を姉に持ち、困ったものだと、事あるごとに説教などを垂れておりましたが、
しかし、この時ばかりは、心強い同志を得たような気持ちになりました。
 そうだよなあ。それがやっぱり自然だよなあ。

 結局、何が言いたいのかと申しますと、人の常識、人の欲、そういったものから外れた世界は、
普段はなかなか考えづらいものですが、しかし、自然の大きな流れというものに思いを馳せることが、たまには、人の世界の救いとなることもあるのではないでしょうか。

 以上、奥歯の抜けた、変人の弟でした。

 


 


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