2008年04月11日

クレーム

 先日、チョコ菓子を食べておりましたら、ひとつおかしなものが混じっていました。
おかしいと言いましても、要はチョコレートが溶けて変形していただけなのですが、
これを見た妻は、すかさず、「送ったほうがいい。私に任せておいて」と鼻息を荒くしました。
 以前、チョコの詰まったスティック菓子に、1本だけ、チョコが詰まっていなかったことがあったそうで、普通なら諦めてもよさそうなものですが、ご丁寧にその1本を送り返し、後日、夢のようなお菓子セットを手に入れた、という経験があるそうです。
 ですから、滅多にない好機を逃してなるものかと、やっきになって、早速その1粒をポストに投函したのでした。

 すると後日、本当に、送り返した1粒にはとても見合わぬ立派なお菓子セットが、お詫びの書面と
一緒に届きました。
 さすがに、大きな会社は違うなぁ、と思いました。
私だったらきっと、何言ってんだ、チョコレートが溶けなくてどうする、と書いた葉書を送り返してやるに違いありません。

 随分と昔の話ですが、旅で知り合ったジャーナリストに、この手のクレーム問題を取材した人がおりました。その人から聞いた話に、今でも忘れられないものがあります。
 ある牛乳会社にクレーム品が送られてきまして、それが、紙パックの牛乳に、人だか犬だかの大便が入ったものだったそうです。
 どう考えてみましても、製造過程に大便が混じることはあり得ませんから、これはタチの悪いタカリのようなものです。しかし、それでも、この牛乳会社はちゃんと謝罪をし、それなりのお詫びもしたそうです。
 こういうおかしな連中は結構いるそうでして、相手が異常であればあるほど、面倒な揉め事にならない内に、丸く収めてしまおうというのが、この業界の一般であるということでした。

 かく言う私も、かつて、罪なクレームをつけた覚えがあります。
 タイのバンコクで、ラジカセを購入しまして、勿論これ、お店できちんと確かめてから買った物ですから、おかしなところは何もなかったのですが、宿に帰って早速使ってみると、いきなりプッ、と嫌な音が聞こえて、あとはウンともスンとも、まるで動かなくなってしまったのです。
 これ、当時私が使っていたアダプターが、200Vと100Vでしたか、とにかく国によって使い分けることが出来るタイプのものでして、どうやらこれを間違えて、必要以上の電気を流してしまったみたいなのです。
 ところが、買って30分と経たぬ内に壊してしまったわけですから、いくら自分のせいとはいえ、治まるものが治まりません。で、ダメもとで、いそいそとまた電器屋に出掛けまして、
「なんだか、動かないんだけど・・。どうしてかなぁ・・」
なんて、やってしまいました。
すると店員さん、色々と試した挙句、コートートー(すみません)、と笑顔で新しいものに取り替えてくれました。きっと外人だったから、ことのほか親切に対応してくれたのだと思います。
 店員さん、あれ、私が壊したんです。こちらこそ、コートートー。

 スリランカの仕立て屋さんで、シャツを買いました。
宿に戻ってよく見てみると、生地に虫食いがあることに気がつきました。
店に戻ってクレームをつけますと、
 「穴が開いているのは私のせいではない」と、おばちゃんは言います。
そうかも知れないが、こちらは新品を買ったのだから、穴が開いていれば非常に寂しい気持になる。
取り替えるか、いくらかまけるかしてくれ、と食い下がりますと、
 「同じものはない。穴が開いていようがいまいが、私が縫った手間は同じだから、まけることも出来ない」と答えます。
ああだこうだと言い合う内に、
 「そんな小さい穴、気にしてどうする。その穴は、お前にとてもよく似合っている」
なんてことまで言い出して、私も段々と、確かにこんな小さな穴を気にすることもないか、という気がしてまいりました。

 結局、穴の開いたシャツを手に、何の成果もなく宿に戻りましたが、クレームとは本来、こういうやり取りがあってしかるべきものなのだと思います。
 夢のようなお菓子セットも、大便牛乳も、それはそれで立派な対応ですが、この手の泥臭いやり取りが、形をなくしつつあるというのは、少し、寂しいような気もいたします。




 



    

Posted by wajin at 13:45Comments(0)TrackBack(0)