2007年07月04日

いいぞと思うこと テープの声

 例えば。
自分の携帯電話の契約内容について尋ねたい。
 問い合わせ専用の番号に電話しますと、何々についてのお問い合わせは1を、何々は2を押してください、なんてテープの声が流れます。
 言われた通りにその番号を押しますと、続いて何々は1を、何々は2を。
仕方がないから、やはりその指示通りに番号を押しまして、するとまた、何々は1を・・。
これがどんどん枝分かれして、一体いつまで続くのか、こっちはちょっと尋ねたいだけなのに、どうしてこんな回りくどいことをさせるのか、正直、この野郎、と思います。
 係りの者を呼び出しますのでしばらくお待ちください、なんて、ようやく終点に辿り着いたかと思いきや、只今大変混み合っております。しばらくしてからもう一度お掛け直しください。
 こういうの、本当に、やり場のない怒りを覚えます。

 以前、ミクロネシアで、飛行機のリコンファームをいたしました。
地図の上で見ますとちょっとおかしな気もいたしますが、あの辺は、れっきとしたアメリカ、イギリスの島々でして、土地の人達は当然、英語を日常的に使います。
 私、ただでさえ、こういう母国語の、流暢な英語が苦手なのに、まして相手の顔が見えない電話となれば、これは余計に厄介です。しかし、そうかと言ってオフィスに出向くのも億劫ですから、仕方なく、チケットに記された番号をダイヤルしますと、これがテープの声でした。

 このテープ、思ったよりも分かりやすい英語でしたので、こちらが聞き取れないということはありませんでしたが、問題は、その逆でした。

「Your flight NO. please」と、テープが尋ねますから、私、
「フィフティーファイブ」と答えました。
すると、相手は機械ですから考え込むこともないのでしょうが、やや間があって、
「OK シックスティーファイブ」と言うではありませんか。
ええっ、違うよ、って、私、慌ててもう一度、
「フィフティーファイブ」
すると今度は、
「OK セブンティーファイブ」
まったくもって、OKではないのです。
 これ、考えるまでもなく、私の発音に問題があるのでしょうが、しかしこのやりとり、何度繰り返したか知れません。
 舌を巻いたり鼻を鳴らしたり、ピィフティーファイブとか、フィフィティーファイブ、なんて、実に媚を売った、様々なフィフティーファイブを連呼して、お仕舞いには、自分でも想像もしなかった新しいフィフティーファイブが生まれたりして、ところが、融通が利かぬのは、血の通わない機械です。
「OK フォーティーファイブ」
 大体、ナントカティーファイブって、そう選択肢があるわけではないのに、機械はどうしても私のフィフティーファイブを受け入れてくれません。そこには何がしかの確たる理由があるようでして、フィフティーファイブって、結構奥が深いんですね。
 しかし、それにしましても、相手が人でしたら、普通はこんなに頑なにはならないと思うのです。
この電話、ショッピングモールの公衆電話から掛けていましたから、大変恥ずかしかったです。

 都内に住んでおりました頃、家の近くを、週に1、2度、ちり紙交換が回ってきました。
「毎度お馴染みのちり紙交換でございます」なんて、例の調子でやって来ます。
 私が住んでいたのは、荻窪という町でして、この界隈、狭い路地とアパートが密集する、世帯数が多い割には、昼間はほとんど人がいない、そんなエリアでありました。また、若者のひとり暮らしが多いこともあって、新聞なんかを取っている人間は、逆に少なかったのかも知れません。

 ある時、私が部屋で横になっておりますと、いつものように、
「古新聞、古雑誌、ボロ布等ございましたら、多少にかかわらず・・」
なんて、聞き慣れたテープの声がしてきました。
 ところが、ちょうど私のアパートの前を通り過ぎた辺りで、突然、そのテープの声がブチッと途切れて、朗らかな女性の声が一転、親爺のだみ声に変わったのです。
「どうなってるんだよ、冗談じゃないよ!もう2時間だぞ、2時間っ!誰もいないのかよ!いい加減にしろよ!」

 私、びっくりいたしました。びっくりすると同時に、大変おかしくなりました。
よっぽと古新聞が集まらなかったんだろうなぁ。
一言叫んでやらなきゃ、気が済まなかったんだろうなぁ。
 私、いいぞ、と思いました。
そんなテープを流してうろうろしていたって駄目だよ、おじさん。
そうやって、魂の叫びをぶつけなきゃ。新聞くれーっ、て。
血の通った熱い声を、生きた本当の声を、もっと聞かせてくれよ。

 私、新聞を取っておりませんでしたから、実際には何も協力出来ませんでしたが、心の中で、頑張れ、とエールを送ったのでした。

   

Posted by wajin at 17:51Comments(0)TrackBack(0)