2007年05月12日
西伊豆町消防団
てるてる坊主を、逆さまに吊らすと雨が降る、なんていいますね。
子供の頃は、雨を願うような屈折した気持ちはなかった気がいたしますが、やはり歳を重ねたせいでしょうか、よそとの面倒な関わりに、こうした陰鬱な願いが湧くことも珍しくはなくなりました。
そこで本日、久し振りに、てるてる坊主を作りました。
行楽を予定されている方には大変恐縮ですが、それは勿論、逆さ吊りであります。
この4月に、私、消防団に入団いたしました。
これは何も、焚き火好きが高じて本物の火事が見たくなったから、などという不謹慎な理由からではありません。
やむなく、と言うのが正しい状況でして、と言いますのも、昨秋移ってまいりました私の村は、世帯数40ばかりの小さな集落でして、なんと、その8割近くが70歳以上という、正に過疎化・高齢化といった問題を縮図にしたかのような村であります。
60にもなろうかという腹の出た立派な親父が、若い衆、若い衆、と呼ばれております。
こんな環境でありますから、私、この村では赤ん坊同然の最年少、同時に自他共に認める期待の星なのであります。
こういう状況で、ひとつ消防団に入ってくれや、と頼まれましたら、そう滅多な人間は断れるものではありません。私も、やむなく首を縦に振りまして、先日、新入団員訓練というのに参加してまいりました。
新入団員に、まず何を教えるか。
私、紛れもなく新入団員でありながら、消防団幹部のような気持ちでこれを考えました。
普通に考えれば、これは消防の心得、ですよね。
何といっても火事を消すための集団なのですから、実際、火事に直面した際の心得、一歩進んで、消火の手順、ポンプの使い方、こんなところが妥当であると考えました。
ところが、夜の7時に始まりました訓練は、延々、2時間もの間、右向け右、左向け左、回れ右、と、終始、中学生の運動会の練習のようなものに尽きたのです。
しかし、だからといって馬鹿にも出来ません。
こんなことをして何になるんだろう、これでは今火事が起こっても、回れ右、しか出来ないではないか、なんて小首をかしげておりますと、「おいっ、お前っ、首が曲がっているぞっ!」と、すかさず怖い顔で一喝されます。
そもそもこの怖い顔で一喝する指導員が、私とさして変わらぬ歳と見えるのですから、まったく面白い訳がありません。
この訓練、西伊豆町全体の合同訓練でして、我が集落に関して言えば、新入団員は私だけなのですが、山を降りた麓の町には、結構な数の若者がいるんです。元々地元の子達ばかりですから、はたち前後の、確かにこれは名実共に新入団員であります。これに交じって、いい年をしたヒゲ面が、右向け右、左向け左、何とも情けないような気持ちで延々これを繰り返したのでした。
私の隣のちょっと太った青年は、恐らくこういう緊張に弱いタチなのでしょう、「右向けぇー、右っ!」と、号令が掛かりますと、どうしても、キュッとその場で内股になってしまいます。左の足は正しく右を向いているのですが、右の足が反対に、左を向こうとしてしまうのです。
指導員が怒鳴ってこれを矯正しますと、まぁ、こういうのは分かりきった逆効果というものです、彼は益々緊張してしまい、「右向けぇー、右っ!」、キュッ、内股。
私、笑いを堪えるのに必死でした。
こういう訓練が、勿論、統率を重んじるためであることは分かります。
集団行動に慣れていないものですから、殊更、敏感に感じてしまうだけなのかも知れません。
しかし、少しどうかな、と思いますのは、こと集団となりますと、この例に限りません、どうしてもマイナスありきの発想で、その場が支配されているような気がするのです。
統率なんていうものは、個々がしっかりしておれば、いざ火事を目の前にしても、おのずと取れるはずのものであります。ところが、いざという時に、あたふたした人間が出ては困る、という前提でものを考えるものですから、我々みたいのが、こうした馬鹿げた訓練をする破目となる訳です。
キョウツケッ、はズボンのステッチに中指を合わせて、なんて。
「マニュアル」、なんていうのも、これと同じ発想ですよね。
私、あるファミリーレストランで、ウェイトレスが子供に向かって、「お煙草はお吸いになりますか?」と尋ねているのを目にしたことがあります。これ本当の話ですよ。
まあ、郷に入らば郷に従え。あまり言うのもみっともないですね。
という訳で、明日は自衛隊との合同訓練です。
天気予報によりますと、伊豆地方は気持ちのよい晴れ。
あの太った青年が来てくれることをささやかな楽しみに、今夜は早寝したいと思います。
子供の頃は、雨を願うような屈折した気持ちはなかった気がいたしますが、やはり歳を重ねたせいでしょうか、よそとの面倒な関わりに、こうした陰鬱な願いが湧くことも珍しくはなくなりました。
そこで本日、久し振りに、てるてる坊主を作りました。
行楽を予定されている方には大変恐縮ですが、それは勿論、逆さ吊りであります。
この4月に、私、消防団に入団いたしました。これは何も、焚き火好きが高じて本物の火事が見たくなったから、などという不謹慎な理由からではありません。
やむなく、と言うのが正しい状況でして、と言いますのも、昨秋移ってまいりました私の村は、世帯数40ばかりの小さな集落でして、なんと、その8割近くが70歳以上という、正に過疎化・高齢化といった問題を縮図にしたかのような村であります。
60にもなろうかという腹の出た立派な親父が、若い衆、若い衆、と呼ばれております。
こんな環境でありますから、私、この村では赤ん坊同然の最年少、同時に自他共に認める期待の星なのであります。
こういう状況で、ひとつ消防団に入ってくれや、と頼まれましたら、そう滅多な人間は断れるものではありません。私も、やむなく首を縦に振りまして、先日、新入団員訓練というのに参加してまいりました。
新入団員に、まず何を教えるか。
私、紛れもなく新入団員でありながら、消防団幹部のような気持ちでこれを考えました。
普通に考えれば、これは消防の心得、ですよね。
何といっても火事を消すための集団なのですから、実際、火事に直面した際の心得、一歩進んで、消火の手順、ポンプの使い方、こんなところが妥当であると考えました。
ところが、夜の7時に始まりました訓練は、延々、2時間もの間、右向け右、左向け左、回れ右、と、終始、中学生の運動会の練習のようなものに尽きたのです。
しかし、だからといって馬鹿にも出来ません。
こんなことをして何になるんだろう、これでは今火事が起こっても、回れ右、しか出来ないではないか、なんて小首をかしげておりますと、「おいっ、お前っ、首が曲がっているぞっ!」と、すかさず怖い顔で一喝されます。
そもそもこの怖い顔で一喝する指導員が、私とさして変わらぬ歳と見えるのですから、まったく面白い訳がありません。
この訓練、西伊豆町全体の合同訓練でして、我が集落に関して言えば、新入団員は私だけなのですが、山を降りた麓の町には、結構な数の若者がいるんです。元々地元の子達ばかりですから、はたち前後の、確かにこれは名実共に新入団員であります。これに交じって、いい年をしたヒゲ面が、右向け右、左向け左、何とも情けないような気持ちで延々これを繰り返したのでした。
私の隣のちょっと太った青年は、恐らくこういう緊張に弱いタチなのでしょう、「右向けぇー、右っ!」と、号令が掛かりますと、どうしても、キュッとその場で内股になってしまいます。左の足は正しく右を向いているのですが、右の足が反対に、左を向こうとしてしまうのです。
指導員が怒鳴ってこれを矯正しますと、まぁ、こういうのは分かりきった逆効果というものです、彼は益々緊張してしまい、「右向けぇー、右っ!」、キュッ、内股。
私、笑いを堪えるのに必死でした。
こういう訓練が、勿論、統率を重んじるためであることは分かります。
集団行動に慣れていないものですから、殊更、敏感に感じてしまうだけなのかも知れません。
しかし、少しどうかな、と思いますのは、こと集団となりますと、この例に限りません、どうしてもマイナスありきの発想で、その場が支配されているような気がするのです。
統率なんていうものは、個々がしっかりしておれば、いざ火事を目の前にしても、おのずと取れるはずのものであります。ところが、いざという時に、あたふたした人間が出ては困る、という前提でものを考えるものですから、我々みたいのが、こうした馬鹿げた訓練をする破目となる訳です。
キョウツケッ、はズボンのステッチに中指を合わせて、なんて。
「マニュアル」、なんていうのも、これと同じ発想ですよね。
私、あるファミリーレストランで、ウェイトレスが子供に向かって、「お煙草はお吸いになりますか?」と尋ねているのを目にしたことがあります。これ本当の話ですよ。
まあ、郷に入らば郷に従え。あまり言うのもみっともないですね。
という訳で、明日は自衛隊との合同訓練です。
天気予報によりますと、伊豆地方は気持ちのよい晴れ。
あの太った青年が来てくれることをささやかな楽しみに、今夜は早寝したいと思います。
